LAB — 漫画広告

AI漫画広告は、
リサーチがすべて

AIを使えば、漫画広告の絵はすぐに出せます。コマ割りも吹き出しも、日本語のセリフも入ります。

絵で差がつかなくなったぶん、差がつくのは中身です。誰の、どんな悩みを、どういう流れで見せて、最後に何を置くか。neko punchは、それをリサーチで決めています。転職支援の漫画広告を例に、何を調べて、それを8枚の漫画にどう落としたかを書きます。

公開: 2026年9月12日
90日
配信中の広告を調べた期間
10項目
調べて分かったことを、漫画の中身に入れた数
5つ
経歴書のアドバイス。実在の転職メディアと突き合わせ済み
この記事の結論
  • AIで絵が描けるようになった今、漫画広告の出来を分けるのは中身です。中身は、配信中の広告とオーガニックの漫画投稿を調べて決めます。
  • 絵柄は特定の作家の絵に似せず、商材に合わせてトンマナを決めます。
  • 転職の分野では、漫画広告を出している会社はまだ少なく、よく見かける漫画は体験談の形、入口は無料で軽いものでした。
  • 調べて分かったことを10項目、そのまま漫画の中身に入れました。体験談の形、1枚目の場面、師範の話し方、最後の1枚の言葉まで、根拠のない部分はありません。

この記事に出てくる「転職師範」は、当社が制作実績用に作った架空のサービスです。調査で見た他社の広告は、社名や画像を出さずに傾向だけを書いています。

01

調べて作った漫画広告

1枚目。深夜のオフィスで天井を見上げる主人公。電車で同期の転職報告を読み、自室で職務経歴書に1行しか書けずにいる
01つかみ
2枚目。経歴書の見立て30分・無料の予約画面を見て、相談所の格子戸を開ける。和室で師範が経歴書を読む
02出会い
3枚目。師範に一番苦労したことを訊かれ、カゴ落ちのリマインドメールで購入率を上げた話をする
03質問
4枚目。師範に立派な実績だと言われて主人公がはっとする。経歴書の1行が赤で書き直され、指南 其の一
04其の一
5枚目。指南 其の二は冒頭の三行に要約を置くこと、其の三は数えられるものを書くこと
05其の二・三
6枚目。指南 其の四は志望動機、其の五は職務ごとのまとめ方。主人公が必死にメモを取り、時計は30分をさす
06其の四・五
7枚目。自室で経歴書に次々と書き足す主人公。数週間後、スーツ姿で面接室のドアを開ける
07結末
8枚目。転職のプロが職務経歴書を見て具体的にアドバイスします。経歴書の見立て30分・無料。無料で予約するボタン
08CTA

横にスワイプすると、8枚を順に読めます。転職支援の架空のサービス「転職師範」の漫画広告で、1:1の画像を8枚、横にめくって読む形式です。Xのカルーセル広告(2〜6枚)向けには、1・2・3・4・7・8枚目の6枚の版を用意しています。

02

絵はすぐ出る。差がつくのは中身

AIを使えば、漫画のコマ割りも、効果線も、日本語の吹き出しも1ページ単位で描けます。絵を描く手間は、もう差になりません。

差がつくのは中身です。

この3つは、机の上で考えてもそれらしい答えが出ます。ただ、それらしいだけでは、同じ分野の広告の中で読まれるかどうかが分かりません。だから当社は、先に配信中の広告を調べて、中身を決めます。

この記事の結論

AI漫画広告は、リサーチで中身を作り込んだぶんだけ読まれる。

03

何を調べるか

リサーチで見るのは、広告とオーガニック投稿の両方です。そのうえで、商材に合わせて絵柄とトンマナを決めます。

配信中の広告

今回は、転職・キャリアの分野で直近90日に配信されているSNS広告を調べました。あわせて、漫画広告の作り方を解説した制作会社の記事と、広告の表現のルールも確認しています。

01漫画広告を出している会社は少ない

長く配信されている広告の多くは、求人を告知する静止画でした。漫画を使っている会社はごく一部で、空いている場所です。

02よく見かける漫画は体験談の形

分野を問わず、よく見かける漫画広告は「使ってみた人の話」でした。1枚目で日常の困りごとを見せ、サービスはそれを助ける役で出てきます。

03入口は無料で軽い

15分のヒアリング、45分のオンライン面談、1分の診断。転職を決めていなくてもよいと書く会社もありました。

04転職の漫画は淡いカラー

見かけた転職の漫画広告は、どれも淡い色で描かれていました。相談相手は、主人公と同年代のアドバイザーです。

ある転職支援サービスの3ページの漫画は、次の順番でした。ノウハウはほとんど教えず、「相談したら安心した」という体験を見せています。

つらい日常→きっかけ→相談の場面→数か月後→無料の入口

制作会社の解説記事で共通して書かれていたのは、1コマ目は共感から入る、吹き出しは20字前後、カルーセルは5〜8枚、主人公は読む人に近い現実的な人物にする、最後は「詳しくはこちら」ではなく具体的な行動を書く、といったことです。

転職の分野で漫画広告を出した結果の数字は、公開されているものを見つけられませんでした。

オーガニックの漫画投稿

SNSには、漫画を投稿しているアカウントがとても多くあります。広告の漫画は、そうした投稿と同じフィードに並んで読まれます。読む人はふだんから漫画を読み慣れているので、その隣で見劣りしないことが前提です。

オーガニック投稿で見るのは、次のようなことです。

数が広告よりずっと多いぶん、広告だけを見るより、読まれる漫画の型がはっきり見えます。

絵柄とトンマナ

絵柄は、商材に合わせて決めます。転職のようなまじめな相談ごとと、コスメやゲームアプリでは、似合う線・色・人物の頭身・セリフの口調が違います。

今回の転職の漫画は、人生にかかわる相談ごとなので、落ち着いた白黒の劇画寄りの絵柄にしました。調べた転職の漫画広告が淡いカラーばかりだったことも、白黒を選んだ理由です。主人公と師範は先に設定画を描き、8枚すべてでその顔にそろえています。

04

調べたことを、漫画の中身にする

調べて分かったことは、10項目をそのまま漫画の中身に入れました。8枚のどこを取っても、理由を説明できる状態にしています。

調べて分かったこと 漫画の中身にしたこと
よく見かける漫画広告は体験談の形 師範に職務経歴書を見てもらう体験談にした
1枚目は日常の困りごと、共感から 1枚目は深夜のオフィスと、同期の転職報告
主人公は読む人に近い、現実的な人物 3年目の会社員。ECサイトの運用を担当している
入口は無料で軽い。転職を決めていなくてもよい 「経歴書の見立て 30分・無料」「転職するか決めていなくても相談できます」
最後は具体的な行動を書く ボタンは「無料で予約する」。2枚目で主人公が予約したものと同じ
転職の漫画は淡いカラーで、相談相手は同年代 白黒の絵柄に、和室と作務衣の師範。フィードの中で見分けがつく
年上の指南役は説教役に見られるおそれがある(当社の見立て) 師範は答えを言う前に訊く。「この三年で、一番苦労したことは何だ」
吹き出しは20字前後 長いセリフは、2つの吹き出しに分けた
Xのカルーセル広告は2〜6枚 8枚の版と、物語だけで通じる6枚の版
読む人の年齢などを言い当てる呼びかけは制限されている 読者には呼びかけず、主人公の心の声として描く

アドバイスの中身も調べています。師範が教える5つは、実在の転職メディアの記述と突き合わせて、書いてあることと食い違わないかを確かめました。広告の中で教えることが間違っていたら、どれだけ読まれても逆効果です。

リサーチで決まったこと

体験談の形、1枚目の場面、師範の話し方、最後の1枚の言葉。

05

8枚の設計図

調べたことをもとに、先に8枚の役割とセリフを全部決めました。絵を描くのはそのあとです。

  1. 01つかみ
    「今の会社、もう3年目か…」

    深夜のオフィス、同期の転職報告、1行しか書けない職務経歴書。1コマ目は共感から入ります。

  2. 02出会い
    「無料なら、見てもらおうかな」

    予約画面を見て、相談所の戸を開けます。ここで出したオファーを、8枚目でもう一度出します。

  3. 03質問
    「この三年で、一番苦労したことは何だ」

    師範は答えを言わず、訊きます。主人公は、カゴ落ちのメールで購入率を上げた話をします。

  4. 04其の一
    「それは立派な実績じゃ」

    話したことが、そのまま経歴書に書ける実績になります。物語の山場です。

  5. 05其の二・三
    アドバイスをまとめて入れる

    冒頭の三行に要約を置く。数えられるものを書く。

  6. 06其の四・五
    「ちょっと待ってください、メモします!」

    志望動機の扱いと、転職が多い人のまとめ方。主人公が追いつけなくなるくらい続けます。

  7. 07結末
    「私、けっこういろいろやってたんだな」

    自分で書き足していき、数週間後に面接室へ向かいます。

  8. 08CTA
    経歴書の見立て 30分・無料

    主人公が受けたのと同じサービスを、読む人の入口にします。

前半の4枚は物語、アドバイスは後半にまとめています。体験談の形でも、読んだ人の手元に役に立つことが残るようにするためです。X用の6枚版は、アドバイスの5・6枚目を抜いても話が通じるように組んであります。

06

漫画のテクニック

中身が決まったら、次は漫画として読めるかどうかです。絵はAIで1ページずつ描いていますが、読みやすさは指示の出し方で決まります。8枚を描いたあと、読む順、吹き出しの順、人物の顔、紙の中身の直しで、延べ11回描き直しました。気をつけたことを書きます。

1. コマは右から左へ読ませる

日本の漫画は、同じ段の中を右のコマから左のコマへ読みます。並びが逆だと、質問より先に答えが、原因より先に驚いた顔が目に入ってしまいます。

3枚目のコマに読む順の番号1から4を重ねた図。上段の右が1、左が2、下段の右が3、左が4
3枚目。①師範が訊く → ②主人公が答える → ③「それで、どうした」 → ④さらに答える。先に話す人を右のコマに置いています。

直し方は3つです。

2. 吹き出しも右から

1つのコマで2人が話すときは、先に話す人の吹き出しを右に置きます。話し手の位置に合わせて吹き出しを置くと、順番が逆になることがあります。吹き出しだけを動かすと、しっぽが長くなってコマを横切るので、人物の左右ごと入れ替えて描き直しました。

3. 人物は、登場させてから話させる

2枚目は最初、予約画面のすぐ次のコマに師範が座っていました。いつのまにか師範がいる、という読み味になるので、主人公が相談所の格子戸を開けるコマを足しています。1コマ足すだけで、場所が変わったことが伝わります。

4. アドバイスには札をつける

師範の指南には、黒地に白抜きの「指南 其の一」〜「其の五」の札を付けました。どのコマがノウハウなのかが一目で分かり、見返すときの目印にもなります。

5. 色は1色だけ。使う場所を決める

白黒の中で、赤は経歴書の書き直しと、最後の1枚のオファーの枠だけに使っています。赤が出てきたら「ここが変わった」と分かるようにするためです。

6. 山場にはセリフを置かない

4枚目で師範が「それは立派な実績じゃ」と言ったあと、主人公がはっとするコマはセリフなしで、背景をベタフラッシュと集中線にしました。7枚目の面接室のコマもセリフなしです。言葉で説明するより、絵で止めたほうが残ります。

7. 時間の経過は絵で見せる

6枚目の最後は壁の時計で30分たったことを、7枚目は服をスーツに変えて数週間後を見せています。ナレーションの枠を足さずに済みます。

8. 紙と画面の中身は、全文こちらで決める

経歴書やスマホの画面に字が見えるときは、中身を全部こちらで書いて渡します。任せると、それらしい文章を勝手に書き込みます。今回も、実在の製品の名前が入ったり、「担当より、変えたことを書け」と言った直後の紙に「〜を担当し」と書かれたりしました。

メモを取るコマでは、ノートの字が書いている本人から見て逆さになっていました。主人公の肩越しのアングルに変え、書いている人からも読む人からも正しい向きで読めるようにしています。

9. セリフは、人物の言葉で書く

広告のコピーのような決め台詞やナレーションは入れていません。漫画の人物に言わせると浮くからです。主人公は普通の会話、師範は「拝見しよう」「〜書け」「〜じゃ」と師範らしい言い方、と人物ごとに決めて書いています。

07

時間の使い方

時間の大半を使ったのは、配信中の広告を調べることと、8枚の流れとセリフを決めることでした。絵は1ページ数分で描けます。

絵を描き始めてからの直しも、ほとんどは「漫画として読めるか」です。原寸で1コマずつ読んで見つけました。絵が出せることと、読まれる漫画広告になっていることは、別の話です。

08

漫画広告で気をつけていること

表現のルールも、リサーチの一部です。

09

よくあるご質問

AIで漫画広告は作れますか?

作れます。コマ割り、効果線、日本語のセリフまで1ページ単位で描けます。ただし絵が出せることと、広告として読まれることは別です。当社は配信中の広告を調べてから構成とセリフを決め、コマの読む順や吹き出しの順まで指示して描いています。

漫画広告のリサーチでは何を見ますか?

広告とオーガニック投稿の両方です。広告では、同じ分野で漫画を使っている会社があるか、よく見かける漫画はどんな形か、最後にどんな入口を置いているかを見ます。SNSには漫画のアカウントがとても多いので、オーガニック投稿では、読まれている漫画の枚数や1枚目の引き、絵柄と色を見ます。そのうえで、特定の作家の絵に似ないように、商材に合わせて絵柄とトンマナを決めます。

漫画広告は何枚が目安ですか?

カルーセルなら5〜8枚が目安とされています。Xのカルーセル広告は2〜6枚までなので、当社のサンプルは8枚の版と6枚の版を作りました。

漫画広告で気をつける表現はありますか?

見ている人の年齢や健康状態、お金に困っていることなどを言い当てる呼びかけ(「あなたは〜ですか?」の形)は、Metaの広告ポリシーで禁止されています。当社は主人公のセリフとして描き、読者には呼びかけません。年収アップや1位といった断定も、根拠がない限り入れません。

橋本剛典
橋本 剛典(Goten Hashimoto)
neko punch株式会社 代表取締役

TikTok for Business(ByteDance)でChief Creative Officerを務めたのち、現在は東証スタンダード上場・株式会社ピアラのChief Creative Officerを兼任しながら、 生成AIによる広告クリエイティブ制作会社ネコパンチを経営。 プラットフォーム側・広告主側・制作側の3つの立場から、運用型広告のクリエイティブ供給に取り組んでいる。

縦型ショート動画の戦略については、宣伝会議AdverTimes.掲載「縦型ショートはABC時代へ:アルゴリズム・ブランド・コミュニティ—3つを育てるクリエイティブ戦略」も参照。

御社の商材で、漫画広告を1本

誰に何を伝えたいか、最後に押してほしいボタンをお聞かせください。同じ分野の広告を調べて、構成とセリフの案からお出しします。