中の人が書く、
AI広告制作会社の選び方
「AI広告制作会社の選び方」の記事は、すでにあふれています。ただ、その多くは比較サイトやツール提供元が書いたものです。 この記事は、AI広告を毎月つくっている制作会社の中の人が書きます。
中から見ると、作り手は得意分野の違う6タイプに分かれています。その見分け方に、生成1回の実費やサンプルで見ている箇所など、作る側から見える材料を混ぜて書きます。うちも失敗はしていて、その話も入れました。
- AI広告の作り手は6タイプに分かれます。まず「1本の作品か、検証のための量か」で絞ってください。
- 価格は「1本あたり」に換算して比べます。安さの正体は、工数をどちらが持つかです。
- サンプルは各社の最高傑作です。手・文字・空間のつながり・リップシンクなど、粗が出やすい6箇所を見ると平均品質が推し量れます。
- 最後は11の質問を同じ条件で。「実際の事例」と「企画は誰が作るか」から聞くのがおすすめです。
書き手のneko punch株式会社も6タイプのひとつです(位置は後半で)。 社名の記載は公開情報に基づく例で、優劣ではありません。修正・削除のご希望はお問い合わせから。すみやかに対応します。
AI広告の作り手は6タイプに分かれる
同じ「AI広告制作会社」の看板でも、中身は6タイプに分かれます。
図1: 縦に長い2つは、会社によって位置が変わるという意味です。同じ看板でも、企画から引き受けるかは会社によります。
| タイプ | 実名の例 | 向いている案件 |
|---|---|---|
| ① 作家型 映像作家・監督がAIで作る |
個人のAI映像作家・映画監督への直接依頼が中心 | 1本を作品として作りたいブランドCM・MV。作家の目と演出が価値になる案件 |
| ② CMプロダクション 制作会社のAI部門・AI専業スタジオ |
PYRAMID AI、amana、DOT SCENE など | TVCM級の画づくり、年に数本の大作。企画から仕上げまでの統合力 |
| ③ 量産型制作会社 月額・パッケージで数を出す |
Neurosphere、HANERU、ムビラボアド AI、Shuttlerock Studio など | 運用型広告向けに、大量の広告が必要な場合。月10〜20本規模の継続供給 |
| ④ 静止画特化 バナー生成サービス |
Banavo、Tasky など | EC商品画像やバナーの機械的な大量生成。1枚数百円の世界 |
| ⑤ 内製化ツール 自社で回すためのSaaS |
リチカ など | 社内に運用担当がいて、訴求の仮説を自分たちで立てられる会社 |
| ⑥ 広告代理店 配信運用とセット |
サイバーエージェント、電通デジタル、セプテーニ など | 制作と運用をまとめて任せたい案件。規模が大きいほど噛み合います |
① 作家型 — その作家に惚れ込んだなら一択です。ウェブサイトを持たない作家も多く、連絡はTikTok・YouTube・XなどのDMが入口になります。案件を押し込むより、その人のスタイルに合う案件かで考えるほうが、結果的にうまくいきやすいと思います。気に入った作風があるなら、その作家本人に相談するのが確実です。
② CMプロダクション — 安定感があります。AIでどうにもならない表現が出ても、ポストプロダクションで仕上げきる体力と経験があります。実写とAIの使い分けも得意です。ただしCMの世界では企画を代理店やフリーのクリエイティブディレクターが担う座組みもあるため、企画から任せられるかは会社によります。
③ 量産型制作会社 — デジタル広告に特化するなら有力です。見るべきは「AIで作れます」ではなく広告が分かっているか。
ただ、ここはひとくくりにできないタイプです。同じ「量産できます」でも、どこから引き受けるかで3層に分かれます。
- 制作だけ — 台本や絵コンテを渡せば、そのとおりに作ってくれます。単価は一番安く、社内に企画できる人がいるなら合理的です
- 企画から — 訴求だけ伝えれば、台本や構成を書いて出してくれます。何を言うかは決まっているが、どう見せるかは任せたい場合に合います
- リサーチから — 配信中の広告や競合を調べ、そもそも何を・何本作るべきかから提案してくるところ。数は多くありません
価格差の多くは、この3層のどこから引き受けるかで説明がつきます。安いところを選んだのに社内が疲弊した、という話は、「制作だけ」の会社に企画も期待していたすれ違いであることがあります。自社に何があって、何がないかを先に決めておくのが早道です。
④ 静止画特化 — テンプレートでバナーを量産する仕組みで、企画は発注側が持ちます。違いは広告専用のガードレール——媒体ごとの入稿サイズ、訴求コピーの生成、日本語文字の精度——で、毎週何十枚を規定どおりに回す段階で効いてきます。
⑤ 内製化ツール — マーケ担当者が自分で作るための業務ツールです。注意したいのは、「AI」の名前で売られていても、実態はテンプレートに素材を流し込む編集ツールで、映像を生成できないものが混ざっていること。
⑥ 広告代理店 — 戦略から運用までセットで任せるのが一般的な使い方です。
よく起きるのは、作品が欲しいのに量産型制作会社へ、量が欲しいのに作家型へという組み合わせです。「AIの腕が悪かった」と総括されることがありますが、タイプが合っていなかっただけ、という場合もあると思います。
御社に必要なのはどのタイプ?
3つの質問で、だいたい絞れると思います。
価格表示の読み方 — 単価型・月額型・ロット型
量産型制作会社を比べるとき最初につまずくのが、価格表示の違いです。出し方は3種類。
| 表示 | 例 | 比べ方 |
|---|---|---|
| 単価型 | 「1本◯万円〜」 | その価格に何が含まれるか(企画・修正・ナレーション)を確認してから比べる |
| 月額型 | 「月◯本で◯万円」 | 月額÷本数で1本あたりに直す。最低契約期間も確認 |
| ロット型 | 「◯本以上で1本◯万円」 | 実際に発注する本数での総額を出してから、1本あたりに直す |
比べるときは「1本あたり」に換算するのがおすすめです。 もうひとつ、3サイズ展開が「1本」なのか「3本」なのかで総額は3倍変わります。数え方を揃えてから見積もりを並べると比較しやすくなります。
安さの正体は、生成技術ではなく、工数をどちらが持つかです。 1本数千円のプランは、訴求設計・素材準備・検品を発注側が持つ前提。企画・全数検品・権利処理まで制作側が持つと1本1〜5万円前後になります。 良い悪いではなく、自社で持てる工数と相談して選ぶものです。
AI生成の差は、どこで出るのか
使っているモデルの良し悪しや、プロンプトの技術で差がつくと思われがちです。ただ、モデルは誰でも同じものが使えますし、プロンプトの工夫も数か月で横並びになります。
差が出るのは企画力と選球眼だと思っています。企画力は、何を言うか・誰に届けるかを決める力。選球眼は、生成された大量のテイクからどれを採用し、どれを捨てるかを決める目です。同じモデルに同じ指示を出しても、選ぶ人が違えば納品物は変わります。
サンプルを見るときに見えているのは、モデルの性能ではなくその会社が何を良しとしたかです。次の章は、その見方の話です。
中の人だから言えること — サンプルの見方
AIの粗が出る場所は決まっています。サンプルではこの6箇所を見てください。
- 手と指 — かつては一番の弱点でした。現行のモデルは単純なポーズならほぼ描けるので、崩れたまま残っているなら検品の密度の問題です。複雑な手つきや、小物を持つ手はいまも崩れます
- 文字とロゴ — 画面内の看板・パッケージ・UIの文字。日本語を書けるかはモデルによってはっきり差があります。崩れたまま出ているなら、文字が苦手なモデルで作って直していない、ということです
- カットをまたいだ一貫性 — 同じ人物の顔・髪型・服装が、カットが変わっても同一人物に見えるか。1カットだけのサンプルでは分かりません。複数カットが続く動画で確認してください
- 舞台と空間のつながり — AIはCGと違って空間を完全に理解しているわけではありません。カットごとに内装や家具が別物になっていないか。世界観を作り込むブランド案件では、ここが効いてきます
- 日本の設定に見えるか — 日本の話なのに通行人が外国人ばかり、街並みが日本のものに見えない。モデルは、指示にない舞台を勝手に日本にはしません。日本だと書いていないだけ、ということがあります
- 音声とリップシンク — AIの日本語は、英語ほど完成されていません。口の動きと音声がずれていないか、発音が片言になっていないか。日本語のセリフがあるサンプルを見せてもらってください
この記事のために生成した実物です。○✕はその項目だけの判定で、画像全体の合格ではありません。納品では6項目すべてを通します。
✕ つながりがNGパッと見は同じ部屋です。壁もソファもテレビも合っています。ただしエアコンが窓の右上から左上へ移っています。配管の向きも逆で、これはアングルでは反転しません。窓際のでっぱりの形も、テーブルの色も違います。1カットずつ見ている限り、気づきません。
この6箇所が複数カットにわたって崩れていなければ、その会社の検品は機能しています。 どれもAIの限界ではありません。モデルの選び方と、検品の密度で決まります。サンプルの時点で崩れている場合は、実案件でも同じことが起きる可能性があります。
実サンプルを作ってもらうのが一番
正直に言うと、サンプルの出来だけで会社は選ばないほうがいいと思っています。1本の見栄えは、時間と手間をかければどこでも上がるからです。守るべき訴求も、通すべき審査もない条件で作られたものなら、なおさらです。
情報量が多いのは、実際に配信された広告のほうです。審査を通り、媒体の規定に収まり、修正を経て世に出たものには、サンプルには残らない実務の跡がついています。可能なら、そちらを見せてもらってください。
そのうえで一番効くのが、御社の与件を渡して1本作ってもらうことです。実際の商材・実際の訴求で出てきたものなら、その会社が御社の案件をどう解釈したかが見えます。既製のサンプル100本より、これ1本です。無料か有料かは会社によりますし、その時期の稼働状況にもよります。
もうひとつ、表現の幅も見てください。実写トーンだけ、アニメ調だけ、と1系統に偏っていないか。得意な絵柄が1つだと、案件のほうをその絵柄に寄せることになりかねません(自戒です)。商材に合う絵柄はやってみないと分からないので、絵柄をまたいで試せるかは効きどころです。
発注前に確認する11の質問
同じ条件で聞くと、見積もりの安さだけでは見えない差が出ます。私たちも聞かれる側として、この11個は答えられるべきだと思っています。
- 実際の事例はありますか 実配信のものを見せられない事情はよくあります。それでも業種・本数・進め方なら、匿名で聞ける場合があります。
- 企画・構成はどちらが作りますか 安いプランほど、企画・素材準備・検品を発注側が持つ前提です。見積もりの安さは、この工数の移動と引き換えかもしれません。
- 各動画は「別の企画」ですか、「テロップ差し替え」ですか 一番大きな分かれ目です。色替え・テロップ替えの派生は、配信面で同じ動画として扱われることがあり、検証になりません。
- 権利保証の範囲はどこまでですか 商用利用の保証範囲と、類似人物などの問題が起きたときの対応。
- 納品物は買い切りですか 利用期間・媒体の制限や二次利用費の有無。月額契約なら、解約後も使い続けられるか。
- 動画になる前に、確認の機会はありますか キャラクター・舞台・服装・構図を、生成前に確認できるか。動画の再生成は時間も実費も大きいので、絵コンテ段階で合意する工程があるかを聞きます。
- 修正は何回まで、いくらですか AI生成は無料ではなく、5秒のカット1本で数百円の実費がかかります。「無制限」がこれをどう吸収しているのか。回数より、初稿の精度を上げる仕組みがあるかが本質です。
- 縦・正方形・横の展開は「1本」ですか「3本」ですか 数え方と追加料金。サイズごとに構図を作り分けるのか、1つの素材をクロップするだけなのかも。
- 制作物を実績として公開されますか 守秘が必要なら、実績公開の扱いを契約前に。
- 配信結果は見てもらえますか 結果を共有したときに次の制作へ反映する仕組みがあるかで、2回目以降の精度が変わります。
- 納品物はそのまま入稿できる状態ですか 媒体の入稿規定、命名規則、テキスト量の制限。「納品後に自社で直す工数」が残るかどうか。
逆に、聞いてもあまり意味のない質問
「どのAIモデルを使っていますか」 — モデルは数か月単位で世代交代しますし、実務ではカットごと・工程ごとに使い分けます。モデル名より、「モデルの世代が変わっても、続きものの案件でトーンを保てますか」と聞くほうが、体制の実力が分かります。
「何%AIで作っていますか」 — 効いてくるのは人がどの工程に入っているかです。企画と検品に人が入っていれば、生成が100%AIでも品質は保てます。
neko punchはどこにいるか
当社は量産型制作会社(③)です。このタイプの中では、少し変わった位置かもしれません。 多くは「制作の実行」を安く速く請ける形ですが、当社は訴求の設計から、全数検品を通した入稿できる状態までが範囲です。 月130点を7か月つくり続けた案件があるので、「月数十本の継続量産は内製でないと無理」とは思っていません。
合わない案件もはっきりしています。作品なら作家型、SKU単位の差し替えなら静止画特化、自社で回すなら内製化ツールのほうが合います。配信・運用は行っていないので、そこは代理店の領域です。
価格は制作費用のページに発注例つきで公開しています。27本で39万円、1本あたり約14,400円です。 この記事で「別企画か派生か確認を」と書いた以上、内訳も書いておきます。独立した企画は3本、残り24本は尺とアスペクト比の派生です。 当社は「入口を3〜4に絞り、器に展開する」考え方で作っているので、この配分になります。派生を何本足しても入口は増えないので、本数の多さだけで比べないでください。
よくあるご質問
AI広告の制作会社はどう選べばいいですか?
まず「1本の作品か、検証のための量か」で大きく分かれます。作品なら作家型かCMプロダクション、量なら量産型制作会社か内製化ツールです。そのうえで、価格の公開・実績の具体性・権利保証の範囲を確認してください。
AI動画広告の制作費の相場はいくらですか?
価格表示が単価型・月額型・ロット型に分かれるため、1本あたりに換算して比べるのが確実です。素材支給の実務直行型で1本数千円〜数万円、企画・検品・権利処理込みで1本1〜5万円前後、監修を厚くすると1本10万円以上が目安です。
安いサービスと高いサービスの違いは何ですか?
生成技術の差ではなく、企画・検品・権利処理の工数をどちらが持つかの差です。安いプランは発注側の工数が増える前提で設計されています。
大量に作ると品質は下がりませんか?
本数と品質はトレードオフではなく、検品体制の問題です。全数チェックの体制がある会社なら本数が増えても品質は保てます。検品方法を発注前に確認してください。
内製ツールと制作会社、どちらがいいですか?
社内に運用担当がいて訴求の仮説を立てられるなら内製ツール、企画から任せたいなら制作会社です。月数十本規模でも設計込みで外注できる会社はあります。
与件をいただければ、サンプルを1本お作りします
この記事で書いたとおり、既製のサンプルより、御社の商材で作った1本のほうが判断材料になります。 訴求と要件をお聞かせいただければ、実制作してお出しします。本数が決まっていない段階のご相談で構いません。